【特別寄稿】隻腕のパラ柔術家・重水浩次「ワールドマスターが教えてくれたもの」
【特別寄稿】隻腕のパラ柔術家・重水浩次「ワールドマスターが教えてくれたもの」
WORLD MASTER 2024
2024年8月29日、米国ネバダ州ラスベガス。
重水浩次、3度目のワールドマスターチャレンジが終了しました。
結果は、初戦4-2で勝ち。
決勝戦、0-0 アドバン0-1で負け。
銀メダルでした。
目標だった金メダルを獲れなかったことは悔しいのですが、『パラ柔術の枠を飛び越えて、ワールドマスターに挑戦しよう!』と決めて、過ごしてきたこの3年間。
これは本当に濃い時間で、悔しい気持ち以上に『よく諦めずに、最後まで駆け抜けたなぁー』という安堵感があるのが本音です。
そして映画に例えるなら、3部作の最後が、ハッピーエンド(金メダル)ではなかったところが、重水らしいと思ってます。
それは、ヒーローとか、チャンピオンとか、格好いい存在ではなくて、ただ柔術が好きで、ただ競技が好きで、ただワクワクする物事に、不器用に泥臭く挑んでこその自分だなって思います。
最後の挑戦として挑んだワールドマスターは1勝を挙げて準優勝、銀メダルを獲得した。
それに気付いたのは、ワールドマスターの3日目、橋本欽也さんのお手伝いで表彰台で日本人入賞者の写真を撮っていた時です。
どこの国の方か分からない、青帯2人の男性と、私服の女性1人の3人組。
男性の1人が嬉しそうに銅メダルを下げていて、もう1人の男性も女性も彼と同じぐらい嬉しそうにしている。
記念写真を撮ると、今度は銅メダルの男性が感極まって涙を流しはじめ、2人も同じように涙を流しはじめ、それぞれが交互にハグをし合って、感動の時間を共有し合っている。
言葉は全く分からなかったし、この銅メダルが、何回勝って手に入れた物なのか、もしかしたら負けメダルなのか、それも分からない。
ただ、彼等にとって、この銅メダルがとても大切な物であることは伝わったし、この日を迎えるまで、いろいろなことがあったんだろうなと想像出来て、思わず貰い泣きしそうでした。
何だか心に響くドキュメンタリー映画を観賞した気持ちになりました。
メダルを獲得した選手の記念撮影。よくあるシーンです。
その後、両者とも感極まって涙。こちらも感動してしまいました。
金メダルを獲る選手は、本当に凄いと思うし憧れます。
強くなりたいと思うし、自分が一番になりたいとも思うと同時に、こんな映画の名シーンのような場面を見せられると、『柔術の魅力は一つじゃない』『まずは"自分だけの金メダル"を目指そう』と、原点に戻れます。