【メディアディレクターコラム】第21回「10年以上ぶりに試合に出ました」
【メディアディレクターコラム】第21回「10年以上ぶりに試合に出ました」
メディアディレクターコラム

お久しぶりのメディアディレクターコラムの更新です。
遅れての報告ながら試合に出てきました。
出た大会は5月末にロサンゼルスのロングビーチで開催された「マスターインターナショナル・ノースアメリカ」で、出た理由はずばり「終活」です。
もう50代になり、昨年末&今年初頭に2回の心臓手術をし、体調的にいつまで柔術できるかわからないと思い始め、また人生も終盤戦に差し掛かり、やり残したことはないか?と思ってたときに、ふと思い立ったのが、今大会への出場でした。
黒帯を取得した2014年から試合をしてなくて、かつムンジアルの会場と同じピラミッドで開催されるこのマスターインターナショナルは、黒帯デビュー戦とピラミッドで試合をする、という「いつかやりたかったこと」が2つ同時に叶ういいタイミングでした。
GW明けのエントリーのため、最終締め切りでの申し込みとなり、参加費$198=約3万円はバカ高いとは思ったけど、まあそれは仕方ないです。
でも試合に出ようと決意したのは5月のGW明けのことで、どうせ出るなら少しは減量を、と思って5kgほどの減量を自らに課したものの、思うように落ちずに苦労しました。
それもそのはず、試合に出ると決めてからも、「試合は日常の延長」として、普段の練習量を維持した状態で出ることにしてました。
その練習量は週に1回、スパーは3本までというもの。
前述した通りに心臓に持病があり、いまも定期健診と朝晩の投薬が日課になってるために、激しい運動などをして心拍数を上げるのはよくないからです。
なので、ほぼ食事のみで減量することになり、試合直前まで思うように体重が落ちずに心理的にストレスとなりました。
最終的には半身浴などを駆使して試合当日は-1kgほどで計量をパスすることができました。
結果的には3位入賞で銅メダルを獲得したものの、1回戦は相手が来ずにノーショウで不戦勝だったので、いきなり準決勝進出となり、ここで腕十字で一本負けでした。

この相手がめっちゃ強くて、組んだ瞬間のカラダの硬さがいまでも思い出されます。
なんか筋肉の塊みたいな感じで、うまく引き込めたものの、すぐにパス&マウントされて、そのまま動くこともできずに腕十字であえなくタップです。
そして結果的にこの選手が決勝戦で、かのトム・ノックスをも完封して優勝、さらに無差別も優勝(無差別決勝は1階級上のヘビー級王者に勝利)してWゴールド獲得。
トム・ノックスに勝って、無差別も優勝しちゃうような相手に週1練習&3本スパーの自分が勝てるワケありません。
でも「黒帯デビュー戦」と「ピラミッドで試合する」という目標は達成です。
あとは「黒帯で1勝」を目標に、また気が向いたら大会に出ることもあるかもしれないですが、個人的には柔術をやる上で試合出場は必要ないと思っています。
そもそも自分は試合は好きじゃないし、試合をするということは日常から非日常になり、心身ともにストレスがかかるし、そもそも柔術をやること自体に「やらないといけない」というような感覚に苛まれるのもイヤな感じです。
普段の柔術は「楽しいからやる」という趣味の範囲内なのに、試合に出るとなるとそれが義務感になるという感覚でしょうか。
だから自分が指導しているミューズ柔術アカデミーでは、試合なんてしなくていいし、出たいなら出ればいい、というスタンス。
それでもみんな楽しく柔術をやっているし、それでいいと思ってます。
柔術は紛れもなく格闘技で、格闘技であるからには「強くなるために」柔術をやってる人も少なくないでしょう。
とはいえ柔術をやってるのは楽しいからで、楽しく柔術をやっていたから結果的に強くなった、が理想です。
まずは楽しく柔術をやることが先決で、その先のことが強くなることや試合で勝つこと。
アダルトでバリバリやっててムンジアル王者を目指してる若者ならともかく、マスター世代の趣味柔術家はこれでいいんじゃないでしょうか。
自分は柔術が仕事だけど、やることに関しては趣味で、楽しいからやってるし、だからこそここまで25年以上も続けられたと思ってます。
今後もこのスタンスでなるべく長く、楽しく柔術を続けていき、またふと思い立ったら試合に出るかも、という感じです。
とりあえず黒帯デビュー戦をピラミッドでして、怪我無くマットを降りることができ(極められたヒジはめちゃ痛かったけど)ただけで、個人的には満足です。

All photos by Satoshi Narita