ムンジアル3位入賞の石黒翔也「チャンピオンになるための飢えと覚悟をさらに強く持ち続けたい」
ムンジアル3位入賞の石黒翔也「チャンピオンになるための飢えと覚悟をさらに強く持ち続けたい」
IBJJF World 2025

現地時間5月31日(土)~6月1日(日)、アメリカ・ロサンゼルスのウォルター・ピラミッドで開催されたブラジリアン柔術の世界選手権「ムンジアル」において、日本から参戦した石黒翔也(CARPE DIEM MITA)が黒帯ライトフェザーで3位入賞を果たした。
石黒は今年のヨーロピアンで準優勝し一気にその名を広めたが、その後のパン選手権とブラジレイロで連敗。このまま埋もれてしまうのかと思われていた中、ムンジアルでは大会3日目に2勝を挙げて準決勝に進出、最終日に勝ち残った。
準決勝戦では、この階級の絶対王者的な存在であるジエゴ・パトに敗れたが、堂々の3位入賞で銅メダルを手にしている。
ヨーロピアン準優勝後の連敗からのムンジアル3位入賞という戦績を残した石黒にインタビューを試みた。

──ムンジアル3位、おめでとうございます。いまの気分はどうですか?
石黒:ずっと夢だった世界最高峰の舞台でメダルを獲ることができて、本当に嬉しいです。ただ、それ以上に「勝てなかった」という悔しさが大きく、試合が終わってから毎日、パトに勝つための方法を考え続けています。この半年間は正直、身体が壊れそうな時期もありましたが、それでも全力で頑張って本当に良かったと思えました。
──準決勝のジエゴ・パトとの試合の感想を教えてください。
石黒:ダブルガードから上を取るという作戦だったので、序盤は狙い通りに展開できました。しかし、パスを狙った場面で相手にグリップを作られ、下からの強い崩しに対応しきれずスイープを許してしまいました。プレッシャーパスで削られる時間が長く続いたものの、所々でスペースを見つけてラペラを繋げたり、潜ったりすることもできました。
中盤で点差が開いてしまったので、そこからはサブミッション狙いに切り替えましたが、ディフェンスが非常に堅く、なかなか攻めきれませんでした。
実際に対戦して感じたのは、全局面で非常に安定した強さを持っていて、勝負所では最大限の力を発揮してくる選手だということです。一つのミスが致命傷になるようなプレッシャーがあり、リスクを取って攻めるのが本当に難しかったです。それでも、フェザー級でもタイトルを持つグランドスラム王者相手に10分間戦い抜けたことは、自分にとって大きな自信になりました。
──黒帯で初めてのムンジアルはどうでしたか?
石黒:プレッシャーや緊張はまったくなく、落ち着いて試合を運ぶことができたので、普段の実力を出せたと思います。色帯時代と比べて大会の雰囲気も違い、「プロの柔術家としてマットに立っている」という感覚がありました。初日は「勝たなければ」という思いが強かったですが、最終日は世界王者との対戦を心から楽しむことができました。
──最終日に勝ち残った3日目の試合後から試合当日までは、どのような気持ちで過ごしましたか?
石黒:世界トップ4に入ったことで、自分が描いていた夢がより鮮明に現実味を帯びてきました。しっかりリカバリーしながら、相手の試合映像を見て作戦を立てていきました。SNSで日本の柔術界が盛り上がっているのを感じ、不安を感じる瞬間もありましたが、「自分は日本を背負って戦っているんだ」と気持ちを引き締め、心身を整えました。
──この3位という結果を、本人としてはどう捉えていますか?
石黒:今できるすべてを出し切った結果なので、その点では満足しています。6年ぶりの入賞ということで、「世界との差が開いている」と言われていた日本柔術界に、少しでも希望を与えられたのではないかと思います。ヨーロピアンで表彰台に立ったあと、パン、ブラジレイロではベスト8止まりだったので、今回の結果で改めて自分がトップ層にいることを証明できました。
あとは、タイトルを獲るだけです。

──今年はヨーロピアンから海外メジャー大会の連戦でした。この連戦で一番辛かったことは何でしたか?
石黒:一番辛かったのは体調管理です。大会を重ねるごとに筋肉が落ちて、水抜きの幅が大きくなり、コンディションを保つのが難しくなっていきました。
また、毎月海外遠征で飛行機移動が続き、時差ボケや体調の変化にも悩まされました。もともと食べることが大好きなので、減量続きの7ヶ月はこれまでで一番過酷な期間だったと思います。
──ムンジアルが終わってから来年のヨーロピアンまでは半年あります。どのような準備をして挑みますか?
石黒:技術、身体、精神、すべての面でレベルアップを図ります。技術面では、今回浮き彫りになった課題をリストアップして、それを一つひとつ練習で修正していきます。
身体面では、まだ筋量が足りないと感じているので、一度75kgくらいまで増量して、来年のムンジアルにピークを合わせたいと思います。精神面では、今回の結果に満足せず、チャンピオンになるための飢えと覚悟をさらに強く持ち続けたいです。
──柔術以外の試合の予定はありますか?
石黒:7月にONEのグラップリングマッチがあるかもしれないので、日本に戻ったらグラップリングの練習頻度も増やしていく予定です。
──ムンジアルで、試合以外で印象に残ったことはありますか?
石黒:サインや写真を求められたり、トップ選手たちに話しかけてもらえたことが印象に残っています。昨年までは「ただの一人の日本人柔術家」だった自分が、プロ選手の一人として認めてもらえたことがとても嬉しかったです。
──今年下半期の目標を教えてください。
石黒:2026年に向けた準備期間として、これまで以上に練習量を増やしていきます。筋トレやストレングストレーニングにも重点を置き、誰とスパーしてもパスできるような技術、そして自分より重い相手でも返せるスイープ力を身につけたいです。
12月のワールドノーギはスケジュール次第で出場が未定ですが、もし出場することになれば、優勝を狙います。
