前澤智コラム「前"さわ"智です」第5回「東京に出てきて一番よかったこと」
前澤智コラム「前"さわ"智です」第5回「東京に出てきて一番よかったこと」
女子柔術家・月イチコラム

東京に出てきて一番よかったことは、女性の練習相手がたくさんいるということ。
正しく言うと、練習しに会いに行ける距離にいるということ。
近くにジムが多数存在すること。
青森にいたときは自分と先輩一人と、私が柔術を始めてしばらく経って入会した女の子が一人。
その間にも、一人、また入会してはやめて、また一人いたような、、と、記憶が朧げなくらい。
定着が難しいのは今も同じ競技ですが、、
先日、浦安中央体育館とカルペディエム自由が丘で行われた練習会に行ってきました。

たくさんスパーが出来て幸せでした。
時折「KIT見ました」とか「MMAはもうやらないんですか」と声をかけて頂き、大変うれしく思います。気にかけてくださる皆さん、本当にありがとうございます。
出稽古ではなく“練習会”このシステムは本当に素晴らしいです。
気兼ねなく参加できます。
一度に自ジムにはいない、色々なタイプの選手と練習ができるということは、多様な技の攻防が経験でき、自分の技術の現状を知ることができます。
もしかしたら自分が知らない技と出会うことにも繋がり、マンネリ防止にもなりますし、自分の武器を初見さん相手に実戦のスピード、タイミングで繰り出せるのか、その武器はどの相手にも通用するのか見定められます。
軽量級男子と女子は一緒に組むことが多いですが、サイズは同じくても体の柔らかさ、関節の柔らかさが違う。
誰とどんな練習をしようが、内容や自分のテーマをしっかりと考えれば無駄なスパーは無いと思っていますが、試合に出たい方は本物の女性で練習するのが一番かと思います。
特に女子練習会では女性だけで30人以上集まるので単純に30通り以上の問題の解答権を得られます。

浦安でも自由が丘でも、練習会後にはじゃんけん大会があったり、皆さんで写真撮影を行ったりと、先頭に立ってくださる方の統率力を感じます。
終始和やかで、初めてお会いする方ばかりにも関わらず、自然と会話が始まり、一見格闘技という暴力的な性質が見え隠れする競技の中に於いて、柔術という競技の特性は「人のつながりや、温かみを柔らかく知る」ことではないでしょうか。
時間を忘れ練習しました。とても楽しい時間。たまに悔しかったり、腑に落ちたり、疑問が生まれたり、思考が止まりません。
女性特有の感情かもしれませんが、男性と練習した時の筋量の差を感じてしまい、本当はテクニックの未完成や、ポジションやタイミングが悪いことが原因かもしれないのに「〇〇さんが力でやってきた」「ガチで潰してくる」という気持ちになることがあります。
実際にそういう方もいますが、さばけるように努力するか、そもそもスパーしない方が身の為です。
もしくは筋トレだと思って割り切るか。
女性同士のスパーの際は、筋肉は無いよりはあった方がいいのかもしれませんが、筋量よりもフレームの正しさで、その辺はカバーできる気もします。
女性同士で練習すると、性別に対してだったり、筋量の差に対する言い訳が使えない分、考えないと上手くスパーできないので、女子が多く集まる練習会は私にとって自分を知るとても大切な練習の機会です。
改めて、この活動を定例化させてくれた井上智子さん北西顕子さんに感謝を伝えたいです。
いつもジムをレンタルさせてくださるカルペディエム様(広尾、自由が丘、川崎、世田谷、横浜)パトスタジオ大塚様、ジムマリアパ様(現EFFECT)ありがとうございます。
浦安体育館に於いて大規模な練習会を企画してくださった原秀紀様、今回お写真をお貸しくださった石田瑞穂様ありがとうございます。

ジムの代表の信念に大きく左右されると思うのですが、出稽古NGがあるということが、柔術を習いたての方は驚かれるのではないでしょうか。
その部分は他の事業とは異なる性質を持っているように感じます。
師匠に弟子がいる、または先生に生徒がいるという構図になるので、会員さんは消費者とは違う存在なのかもしれません。
また出稽古が歓迎されない理由の一つとしては、いずれ対戦相手になるかもしれない、または技術等における情報の漏洩を防ぐ為?そして現会員さんの立場やサービスを守るためかもしれません。
理由を探せばもっと出てくるかもしれませんが、上下の結びつきが強い分、離れることへの厳しさを感じます。
そもそも青森時代は出稽古したくても一時間以上かけて県をまたいで移動しないと行けない距離にしか、ジムはありませんでした。
個人的には、選んでもらえるジムに必要なことは、ライフスタイルの合ったレッスンスケジュールか、近所かどうかの通いやすさを除いて、
①指導者が会員さんの熱量に合った心の寄り添い方ができているか
②インストラクターのキャラクターや指導力(テクニックの知識度や解像度、楽しいだけではなく学びや成長を感じさせてもらえるか、単純に合うかどうか)
③ジム内の環境(綺麗か?利用しやすいか?)
④仲間との人間関係の良好さ
これらの4点が大切かと思います。
特に④はどんなに①②③が優れていても保証されない部分です。
よほど競技に愛があり、その競技をすることだけが目的であればさほど重要ではないかもしれませんが、苦楽を共にする仲間がいる、身体を預け練習できる相手がいる、パーソナルスペースに出入りすることに抵抗がない、これらは大切なことです。
強くなるのも、うまくなるのも、1人ではできない。
格闘技を21年やってきて行き着いた答えです。
広い意味では自分のジムでも、誰かのジムでも、いつか対戦する相手だったとしても同じ競技をやっている仲間だと感じてます。
青森にいた昔の自分に伝えてあげたいです。
もっと楽しい格闘技人生が待っているし、仲間もたくさんできるよ、と。
これからもっともっと、柔術人口が増えるように、今できることを模索中ですがまずは自分の存在を知ってもらうことかなと思います。
いつでもどこでも、気軽に声かけてください!
まだ見知らぬみなさん、一緒に練習できる日を楽しみにしてます。

前澤智(まえさわ・とも)
リバーサルジム東京スタンドアウト所属