接戦に勝つなら欲しい場面で確実にポイントを―― 戸所誠哲の片脚コントロールに学ぶ
接戦に勝つなら欲しい場面で確実にポイントを―― 戸所誠哲の片脚コントロールに学ぶ
Jiu Jitsu NERD教則レビュー

ブラジリアン柔術の試合において、勝敗を決定づける局面は必ずしも大技ではない。
複雑なセットアップを経て決めるスイープも、シンプルに相手の足を持って立ち上がるだけのスイープも、最終的には同じ2点である。
重要なのは、その場面において確実にスコアへ結びつけられるかどうか。
そして、試合で勝敗を分けるのは、難解な仕掛けの巧拙ではなく、どんな局面からでも仕掛けられ、取りたいときにポイントを奪える技術を持ち合わせているかどうかである。
そうした意味では、"片足(片脚)を取って倒す"という攻撃は、最も普遍的かつ汎用性の高い技術といえ、ブラジリアン柔術黒帯でパラエストラ岐阜・可児道場代表である戸所誠哲が世に送り出した『接戦を制するための片脚コントロール』は、競技者が身につけておくべき最重要の武器の一つだろう。
IBJJFヨーロッパ選手権準優勝、アブダビワールドプロ3位、さらにアジアベストプレイヤー賞受賞など、国際舞台で実績を積み重ねてきた戸所は、マスター世代におけるトップランナーの一人だ。
驚くべきは、戸所が専業選手ではなく、仕事や家庭と並行して取り組みながら限られた時間を研鑽に費やし世界の檜舞台に挑んできた稀有な存在であるという点だ。
そんな戸所が作り上げた技術体系だからこそ、本作に込められた実戦性と説得力は計り知れない。

誤解がないように言えば「片脚コントロール」と言っても、それはシングルレッグ(片脚タックル)だけを指しているわけではない。
タックルといえば、レスリングの技を想起してしまうが、ここでは一連の技術が柔術に落とし込まれている。
スタンドにおけるオフェンスとディフェンスを一つの流れとして捉え、実戦で即座に応用できるよう整理されていることはもちろん、ボトムポジションから片脚を取りにいくエントリーも多彩だ。
デラヒーバやリバースデラヒーバ、Xガードから相手の片脚を抱えてのスイープであったり、一連の仕掛けが潰されてからの対処や練習法の説明、戦術への指南など、ボリューム満点の95分になっている。
また、映像は格闘技の専門映像集団=フルフォースが手掛けており、細部に至るまで見やすくわかりやすいのも嬉しい。
試合の最後の最後でポイントを落とす(接戦を落とす)。あるいはタックルの攻防が苦手で守るだけで終わってしまう。そうした選手にとって、本作は技術的羅針盤となるであろう。
キッズ、アダルト、マスター、全世代の柔術競技者にとって「片脚コントロール」は、勝敗を分ける決定因子であり、本作は次なる勝利を求める者へ、確かな指針を与えるはずだ。
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