前澤智コラム「前"さわ"智です」第８回「帰省～家族」
前澤智コラム「前"さわ"智です」第８回「帰省～家族」
女子柔術家・月イチコラム
前回のコラムの終わりに、自分が今故郷が好きか嫌いかをお伝えする内容にしたいと述べました。
中学、高校と、常に柔道の大会では2位の私は1番になることへの渇きをずっと持った人間でした。
女子なのに「格闘技？」と言われ、性格もどんどん男勝りになっていきました。
社会人になりたての頃は気持ちが乗らないことがあると、ジムの駐車場には行くけど車から出られず「今日は練習したくない」と終わる日もありました。
ジムに女性の先輩がいたのですが、負けたくない！が先行してなかなかスパーをお願いできなかったり、クラスの内容が初心者向けだとわかりやすく態度に出したり（もっと難しい技やりたい！的な）。
プロの実力が伴わないくせに偉そう。
いま自分でその時の自分を見たら絶対に関わりたくない、可愛がりたくない、そういうジムの会員でした。
徐々に嫌われてその先輩の結婚式にはジムで唯一呼ばれませんでした（笑）
何か言われたら一芸してお祝いしよう！と、こっそりピアノの練習をしていたのですがまさかの招待されないという。
ブラジリアン柔術の試合に出て、橋本欽也さんにお会いしました。
デビュー戦のお話をもらい、当時のJEWELSに出場し、青森から新幹線で通うも三連敗。
なんとか自分を奮い立たせて、真面目に練習に取り組み、2013年10月札幌で行われた「GLADIATOR 64」でやっと一勝をあげます。
勝ったり負けたり。ここでやっと悔しさをバネに、勝利をご褒美に、自発的に練習量を増やします。
体育館でウェイトして、ジムで練習して、帰りはランニングして、必ず銭湯にいく。
プロデビューしてから何戦もしてようやくスタート地点に立ったんだと思います。
でも、やりがいあることをしているはずの試合の度に怪我する私を見て、姉はやめろと言っていました。
「稼げるわけでもないのに」
何か変えなきゃと思い、上京し、なんとかベルトを獲りました。
さいたまスーパーアリーナで私の顔面に膝蹴りをする選手に大盛り上がりの観衆。
青森から観戦にきていた母親は泣いていました。
ベルトを獲っても、大きな舞台に出ても私の幸せは誰かを不幸にすると思っていた私、「女性なのになぜ格闘技？」と耳がタコになりそうなくらい浴びせられる言葉。
結果を出しても「女子格はお遊戯会」と言われ、頑張る軸が折れそうになった時に母親に電話で「あんたに格闘技があってよかったね」と言われました。
その時に家族は応援していないのではなく、心配してくれていたんだと理解しました。
傲慢になりそうな時、あの頃の自分がこちらを見ています。
葬儀屋時代、お寺の住職さまに言われた言葉。
「根は故郷に、枝をたくさん伸ばして、花は智ちゃんが咲かせたい所で咲かせてね。」
未熟な自分を思い出してしまうから、自分の故郷があまり好きではなかったのですが、今は少し成長したかなと思うし、ありがたいことに古巣でセミナーをやらせてもらえるようになりました。
先日地元の友人に会った時には穏やかな気持ちで話せるようにもなったし「女性が格闘技」と謎の劣等感も持たなくなりました。別にいいじゃんて思います（笑）
これから残りの人生も、周りの人を家族のように心配し、応援していこうと思います。
いつか故郷のためになる活動もしてみたいです。
やりたいことが増えるばかり！！
前澤智（まえさわ・とも）
リバーサルジム東京スタンドアウト所属