トライフォース・早川光由代表に訊く「WORLD 2025」振り返り(第1回)
トライフォース・早川光由代表に訊く「WORLD 2025」振り返り(第1回)
Special Interview

5月29日~6月1日までの4日間、アメリカ・ロサンゼルスでは、IBJJF「World Jiu-Jitsu Championship 2025」(ムンジアル)が開催された。
今年は、石黒翔也や池田海南江といった黒帯日本人選手のメダル獲得という嬉しいニュースもあったが、色帯も含めれば日本人選手にとっての「ムンジアル」はまだまだ高い壁があると言えよう。
そんな折、選手に帯同し、現地でムンジアルを観てきたトライフォース柔術アカデミー代表・早川光由氏は、今大会をどのように感じたのか――。
去年に引き続き、早川代表に大会の振り返りを訊くことができた。本インタビューは全3回に渡って掲載したい。
<第1回>
――早川先生!約一年ぶりのご登場ありがとうございます。
早川:よろしくお願いします。
――毎年恒例になりつつある、IBJJF「WORLD 2025」の総括をお願いしたいと思います。
早川:もう一年経ちましたか。早いですね。
――今回は久しぶりに現地に行かれたと思いますが、雰囲気はどうでしたか?
早川:2019年以来のピラミッドでした。単なるいちコーチにすぎないのですが、感慨深いものがありました。またここに指導者として帰ってこれたのかと。
――会場には何日間いましたか?
早川:木曜にアメリカ着で、金土日と三日間行きました。
――では、色帯の試合もご覧になったのですね。
早川:はい。今回はトライフォースから茶帯のメンバーの参加も多かったので、金曜から会場に行きました。
――まずは大会のレベルと全体を通しての感想はいかがでしょうか?
早川:レベルに関しては、高くなり続けてるんでしょうけど、十年ぶりに会場に行ったとかいうわけでもないので、ものすごく突き刺さったかといえば特にそんなことはなかったです。
驚くべき技術、驚くべき戦術みたいのは特になかったです。ここ5年くらいは、技術、戦術ともに落ち着いたステージに行ったのかなと思いました。
2010年代のベリンボロ、そしてワームガード、50/50によって、技術、戦略が物凄く変化、進化しました。それをグレイシーファミリーとかは退化というのかも知れませんが。
――もう色んなものが出尽くしたのかも知れませんね。
早川:だと思います。何かエポックメイキング的なものはなかったです。
――その中でも技術の流れはどう感じましたか?
早川:むしろシンプルになったと感じました。例えばワームガードなど、みんな標準装備をしてるけど、繋ぎの技として使っている。ベリンボロなども、それだけで決勝まで勝ち上がるってのはなく、要所要所で使っていく形になったのかなと。
――例年よりパスガードの攻防などが多かったと感じました。
早川:はい、私が現役時代に良くあったダイナミックなパスガードなどの王道スタイルというか、そういった攻防が割と見れました。
――ベスト4以降でもそういった攻防が、例年より多かった印象です。
早川:メイハン・アウヴェス選手などは、とても躍動感がある動きでパスしてて、それに対して対戦相手も、ハメ技で動きを封じ込めるとかではなく、割とガップリ四つで対抗してて、とても良かったです。
――レスリング、柔道などの立技の攻防はどうでしたか?
早川:いわゆるレスリング力みたいのは、僕の現役の頃から重要視されておりました。でもレスリングなど指導する道場も増えてきたので、多くの選手が標準装備してるなとは思いました。
――なるほど。それではトライフォースの選手を含め、日本人の結果はどう受け止めてますか?
早川:トライフォースからは、黒帯では篠田光宏、茶帯では、石井晴、大黒喬士、木村謙太、紫帯では萩野貴旺が出場しました。
――はい。
早川:紫、茶帯では、国内でもトップの実力も持つ3人が挑みました。現状の実力は出せたかなと、そして及ばなかったなと。
――茶帯の石井選手と木村選手は二回戦で敗退でした。
早川:大黒も含めて、とても良い試合をしてました。結果的に負けた相手は、優勝か準優勝をしてるレベルでしたし、石井に関しては、トーナメントの山次第ではもっと上位に食い込めたなと手応えを感じました。
――石井選手は、優勝も可能性ありましたね。
早川:彼の強さはわかってますので、大会後に黒帯にしました。でもまだ芝本幸司などとは、かなり差があると思いますので、これから彼の険しい道が始まると思っています。
――黒帯の篠田選手は一回戦敗退でした。
早川:篠田は、なかなか本気を出さないやつで(苦笑)
お前、若くないんだからもっと大会出ろ!とかは僕は言わないので(笑)。ゆるーく誘導していたら、アジア選手権で2位になったり、パンパシフィック選手権で優勝したりと、ここ一年くらいでちょっとやる気を出してくれました。確か海外に行くのも初めてとかじゃないかな。彼は英語はペラペラなんですが(笑)。
――ハハハ。
早川:ほんとポテンシャルは、トライフォースで一番といっても良いくらいです。その彼がやっと本気を出してくれて、WORLDの出場枠を取ってくれました。とても嬉しかったです。
――結果に関しては?
早川:ここの読者の方なら理解してくれると思いますが、グランドスラムポイントがないので、どうしても一回戦から優勝候補と当たってしまう現状があります。
強いだけではなく、世界をサーキットしてポイントを獲得してる選手への優位性は揺るがない。もちろんファイナルに出る選手は別格なんですが、やりようによっては表彰台には上がれるなと思いました。
――他の色帯の日本人選手の試合は見れましたか?
早川:もちろん見たかったのですが、なかなかライブで見れる機会はなかったです。
<第2回に続く>