トライフォース・早川光由代表に訊く「WORLD 2025」振り返り(第2回)
トライフォース・早川光由代表に訊く「WORLD 2025」振り返り(第2回)
Special Interview

5月29日~6月1日までの4日間、アメリカ・ロサンゼルスでは、IBJJF「World Jiu-Jitsu Championship 2025」(ムンジアル)が開催された。
今年は、石黒翔也や池田海南江といった黒帯日本人選手のメダル獲得という嬉しいニュースもあったが、色帯も含めれば日本人選手にとっての「ムンジアル」はまだまだ高い壁があると言えよう。
そんな折、選手に帯同し、現地でムンジアルを観てきたトライフォース柔術アカデミー代表・早川光由氏は、今大会をどのように感じたのか――。
去年に引き続き、早川代表に大会の振り返りを訊くことができた。
全3回のインタビュー、第2回をお届けしたい(第1回はコチラ)。
<第2回>
――今回、芝本選手や、澤田伸大選手は出場しませんでした。
早川:いつも出てる二人がいなくて、新世代というか、若手たちとピラミッドを歩いていた時に、世代を超えて夢を追えるってことは素晴らしいことだと感じました。
――二人も来年の出場は狙ってますよね。
早川:はい、二人ともまだ全然諦めてないので、今回二人ともアジア選手権に出場するので、それは来年のWORLDを見据えてのことだと思います。
――芝本選手は、現在44歳ですね。
早川:40歳超えて挑戦してるだけですごいです。芝本に関しては、我々ふたりの間で、現役はここまでと決めてるので、それまでやれることは全部やっておこうと思っております。ちょうど一年前、Jiu Jitsu NERDさんのインタビューで、「俺に練習を見せに来い」と言ったら、週一くらいですが、僕の指導する選手クラスにも参加するようになってます。
――え、インタビューが役に立って良かったです(笑)
早川:本当にそれのおかげだと思いますよ。我々くらい長い関係になってしまうと、面と向かって言うよりも、客観的にメディアなどを通じて私の意見を言った方が、本人たちに真意が伝わる場合もあると思います。
――なるほど。
早川:芝本に関しては、もちろん長年の積み重ねによる怪我もありますし、もしかしたら私にいってない怪我もしてるかも知れない。コンディションとの兼ね合いもあると思いますが、私に今の自分の取り組みを見せようと思って練習に来てくれてるのはありがたいですね。
――澤田選手は、ワールドノーギ王者でもあるので、WORLDの出場資格は持ってますね。
早川:彼は、トライフォースの内部事情ですが、関西支部のエリア部長になったりして、環境が変わったので当初は大変だと思いますが、芝本同様、究極に自己管理ができる人間ですので、練習環境の作り方を含めて僕が授けられるものは全部教えたつもりですので、今大阪での環境もしっかり構築して練習はできていると思います。
――出場資格があるのにアジア選手権には出るんですね。
早川:私も当初は出ないのかなと思ってたら、「出ます」と報告がきたので、自分の実力を測りたいのと、もしかしたらポイントなどもできる限り獲得して、トーナメントの山なども意識してるのかも知れませんね。
――今回、黒帯アダルトでは、池田海南江選手と石黒翔也選手が久しぶりの入賞をしました。
早川:池田選手は、女子で今のレベルになって、あそこまでやるのは本当に凄いと思いました。
――準決勝でマイサ・バストス選手に敗れました。
早川:それまでの彼女の戦い方を見て、マイサ選手にもっと対抗できるのではと思ってました。
――マイサ選手が強すぎましたね。
早川:今後にかなり期待できるなと思ってましたが、大会後のJiu Jitsu NERDのインタビューを読んだら、今後はグラップリングにシフトするとのことで、それは残念ではあるのですが、本人がやり切ったと感じたらなら、その選択は尊重したいですね。
――石黒選手に関しては?
早川:単純な言葉になってしまいますが、素晴らしかったです。心技体と良くいいますが、彼はそのすべてをこの日に向けて合わせてきたなと感じました。
準々決勝で競り勝った時のメンタルの強さなどは、目を見張るものがありました。
――準々決勝は逆転勝利でした。
早川:私はこれまで会場で、日本人が入賞をする歴史的な瞬間を生で見てきたのですが、今回それに匹敵する感動を覚えました。
――そこまでですか!
早川:あと、大会後のインタビューも読んだのですが、これほどまでストイックにやってるのかと感動して、うちの選手達にもここは多いに参考にすべきだと伝えました。
――今回入賞した二人は、フィジカル面でも外国人選手に負けない部分があります。池田選手はレスリングで鍛えた体力、石黒選手も大学で運動生理学を学んでおり、筋力トレーニングなどの知識も豊富です。
早川:なるほど。二人とも、フィジカルが日本の柔術家とは一線を画すとは感じました。アスリートとしてのレベルが高いです。
――外国人にも勝てるフィジカルを持ってる二人でもあります。
早川:石黒選手はインタビューで、一回体重を75キロまで上げて、落とすと言ってたので、そう言った知識があるからできるのですね。
――知識がないと出来ない減量方法です。
早川:石黒選手は、試合中に妥協がなく戦える。エネルギーの枯渇感が全くない。エネルギーがなくなったら、いくら技術があっても体は動かない。
――腕がパンパンになったら、もう終わりですもんね。
早川:はい。そこのフィジカルの部分を誤魔化すことなくやってきた人でないと、最後まで粘るというのは出来ないですからね。今回の結果に多いに影響してると思います。
――石黒選手はメンタルも凄いです。
早川:それも感じました。彼は自分を信じれているなと思いました。実は会場で、試合後にすれ違ったので、本当に感動したので「凄かったよ」と声かけました。
<第3回に続く>