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白木大輔、40代半ばでJBJJF全日本制覇「肉体のピークと技術のピークは重なるとは限らない」

久しぶりにアダルトカテゴリーで出場したJBJJF全日本2026で、見事に頂点へと駆け上がった白木大輔(CARPE DIEM HOPE)。

決勝では昨年の王者・井上啓介を一本で下し、全試合一本勝ちという圧巻の内容で優勝を果たした。

40代半ばという年齢から、試合前には「どうやって怪我をせずにタップするか」まで考えていたという。

それでも長年培ってきた経験と技術、そして日々の探求を武器に若い選手たちを退けた。
自身を「トップを目指しているわけではない」と語る白木が、それでも戦い続ける理由とは――。

――JBJJF全日本選手権優勝、おめでとうございます。まずは大会を終えた今の率直な感想を教えてください。

白木:久しぶりのアダルトでの全日本選手権だったので、まさか自分が優勝できるとは思っていませんでした。試合が終わったことへの安堵と、優勝したことへの驚きが入り混じった状態です。

――今大会はアダルトオンリーの大会ですが、マスター世代の白木選手が出場しようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

白木:締め切り直前にエントリーを申し込んだのがきっかけです。締め切り時間を過ぎた状態で申し込み画面に入ってしまって、「もう後戻りできない」と思って、そのまま勢いでエントリーしてしまいました(笑)。

――優勝を目指すうえで、どんな準備をしてきましたか?

白木:「全日本だから」と特別な準備をしたわけではありません。普段通り、日々の練習の中で自分の動きを修正しながら積み重ねてきました。

――実際の試合を振り返ってみて、特に印象に残っている試合や、苦しかった場面があれば教えてください。

白木:試合自体は運良く自分のゲームに持ち込むことができ、すべて一本勝ちすることができたので、試合中に苦しかった場面はありませんでした。ただ、試合当日の緊張は今までにないくらい強かったです。吐きそうになるほど緊張して、恐怖や不安に陥っていました。あれだけの緊張の中で試合をしたのは久しぶりでした。

――決勝戦は昨年の王者・井上選手から一本勝ちしての優勝でした。実際に試合をしてみて、いかがでしたか?

白木:試合前から、トータルバランスが良く、柔らかさがありながら一発の瞬発力もある、非常に強い選手だと感じていました。実際に触れてみても、その印象は予想通りでした。ただ、相手がバタフライガードを選択してきたので、そこは自分にとって得意な展開でした。練習してきたジャミラパスの戦略に持ち込むことができ、自分の得意な形にはめることができました。

――今回、若い選手が数多く出場する中での優勝となりました。40代半ばで全日本の頂点に立ったことについて、ご自身ではどのように受け止めていますか?

白木:今回はたまたま良い形に入ることができて、コンディションも良い状態で戦えたので、運の部分が大きかったと思っています。ですから、結果についてはあまり大きく考えず、粛々と受け止めています。ただ、今回の大会では、10年前に優勝したときにはキッズや高校生だった選手たちと、今度は同じ舞台で試合をすることになり、自分自身の年齢と時間の経過を強く感じました。これまでさまざまな競技を見てきて、年齢や老いにはどうしても勝てないという現実も感じてきました。だから今回は、負ける可能性も当然考えていましたし、「どうやって怪我をせずにタップするか」まで考えていたくらいです。そんな中で全日本の頂点に立てたことは、今でも信じられないような気持ちです。

――アダルトとマスターでは、試合する際に体力やスピードといった部分で違いを感じることはありますか?

白木:最初の立ち合いのスピードや反応、瞬発力は、やはり違うと感じます。一方で体力面については、今回は自分のペースで試合を進めることができたので、そこまで大きな違いは感じませんでした。ただ、10分間ずっと相手のペースで試合をさせられると、不利になることは分かっています。

――経験や技術面で「自分の強み」と感じている部分はありますか?

白木:長年の経験による部分が大きいですが、対戦相手を見れば、なんとなくその人の柔術のスタイルが分かるようになってきました。握手をしたときにも、どういう力の出し方をする選手なのか、おおよその感覚が分かります。そういった、長年の経験から得た感覚や判断力は、自分の強みだと思っています。

――年齢を重ねることで、若い頃と比べて練習方法やコンディショニング、試合への臨み方はどのように変わりましたか?

白木:昔のように朝から夜まで練習することはできなくなりました。以前は全力でやることを重視していましたが、今は考えながら練習するようになりました。その結果、無駄な疲労も溜まりにくくなったと思います。試合に関しても、柔術はアマチュア競技なので、今は自分自身が楽しむものという感覚が強くなっています。ただ、たまにある「ここは勝負」という場面だけは別です。そのときは、「今日で命が尽きる。明日のことは考えない」と自分の脳を騙して、最後まで全身全霊で戦うようにしています。

――40代半ばで全日本選手権を制するために、普段の練習で特に意識していることは何でしょうか? 若い頃と変わらず続けていること、逆にやめたことがあれば教えてください。

白木:普段の練習で一番意識しているのは、まず無理をしないことです。以前と比べて、飛んだり跳ねたりする動きや、無理やり技をかけることはやめました。今はできるだけ関節の軌道に優しい動きを意識して、身体への負担を減らしながら技術を磨くスタイルに変えてきました。

――一般的には年齢を重ねると競技から離れていく選手も多い中、現在もトップを目指して戦い続けるモチベーションはどこから来ているのでしょうか?

白木:実は、トップを目指しているという感覚はあまりありません。単純に日々の技術探求が面白いから続けています。僕自身、30代からの格闘技は趣味でした。ただ、「一騎討ち」のような勝負のときだけは、そこに全身全霊を懸けてきました。40代になってからは、SJJIF WORLDでも優勝して、自分の中で一つ「世界」という名前のついたタイトルを取ることができました。そこからは、「あとは好きなようにやろう」と思うようになりました。時間が過ぎていく速さを感じるようになって、今は周りの人たちのおかげで、「本気の暇つぶし」をさせてもらっているような感覚です。なぜ続けているのかと聞かれたら、僕はプロMMAでも、アダルトの世界選手権でも、世界タイトルを取ったことがありません。格闘技の結果として大きな功績を残した、何かを持っている選手ではありませんでした。だからこそ、まだ戦いたいという気持ちが切れていないのだと思います。

――今回の優勝は、ご自身と同世代で柔術を続けている選手や、これから年齢を重ねていく選手にとっても大きな刺激になると思います。そうした方々に伝えたいことはありますか?

白木:思っていた以上に、マスター世代の方々から反響をいただいていて、正直少し戸惑っています。皆さんに伝えたいのは、肉体のピークと技術のピークが重なるとは限らない、ということです。競技に取り組む中で技術のピークを高めていけば、マスター世代になっても十分に強くなれます。瞬発力や反応速度は年齢とともに落ちていきますが、単純な筋力は、取り組み方次第でまだ伸ばすことができます。だから、失っていくものに目を向けるのではなく、これから伸ばせる部分に目を向けてほしいと思います。同じ境遇、同じ年代で柔術を続けている皆さんを、僕も応援しています。

――今回の全日本優勝を一つの区切りとしたとき、ここから先はどんな目標を持って柔術を続けていきたいですか?

白木:まずはアダルトでまだ取れていないタイトルを取りたいです。IBJJFパン選手権では3位だったので、マスターでパン、ブラジレイロ、そしてAJPのアブダビワールドプロなど、海外のタイトルにも挑戦したいと思っています。中二病みたいで少し恥ずかしいのですが、20代の頃に格闘技雑誌で話していた「世界のアマゾン」になりたいですね。

――次の試合はワールドマスターです。試合に向けての意気込みをお願いします。

白木:日本人選手がまだ入賞していない重量級で、入賞することを目標にしています。大きく気合いを入れて特別なことをするつもりはありません。これまでと同じように、日々を淡々と積み重ねていきたいと思います。応援してくださる皆さんの期待に応えられるように頑張ります。よろしくお願いいたします。

1回戦はルイス・グッジ(Yoyogi Uehara Jiu Jitsu)をガードからのループチョークで極めて一本勝ちで決勝進出。

決勝戦は井上啓太(ALMA FIGHT GYM OSAKA HOMMACHI)をパスしてサイドからキムラを極め、2試合連続の一本勝ちで全日本制覇を果たした。

今大会では姪の三輪莉子も女子ジュブナイル青帯ライトフェザーで優勝しており、ファミリー揃っての金メダル獲得となった。