
10月3日、長崎のHAPPINESS ARENAで「RIZIN LANDMARK 16 in NAGASAKI」が開催された。
2選手が計量オーバーとなり、第6試合は中止に。さらにメインイベントも急きょ72.65キロ契約マッチに変更されるなど、開催前から波乱の展開となった今大会。しかし、そのメインでは長崎県佐世保市出身の堀江圭功が、宇佐美正パトリックをヒジ打ちからのパウンドでKO。波乱の長崎大会をハッピーエンドで締めくくった。

そして、毎回マニアックな視点でお送りしている「Jiu Jitsu NERD視点」として注目したいのが、第3試合、荒東“怪獣キラー”英貴 vs. 長谷川賢の一戦だ。
結果は荒東が3-0の大差判定勝ち。試合では、随所で荒東の攻守両面における打撃テクニックが光った。

序盤は、右利きサウスポーの長谷川が前手から繰り出すパンチを荒東が被弾し、押されているようにも見える展開だった。
しかし、荒東はムエタイ戦士のようなブロックで、顎やコメカミなどダメージに直結する部分をしっかりとガード。実際、長谷川のパンチは当たっていたものの、荒東によればダメージはまったくなかったという。
試合後、長谷川は「序盤にパンチは当たっていて行けると思った」と語っていたが、荒東の巧みなブロックによって、結果的には自身のスタミナを消費する形となってしまった。
荒東は、伝説のシュートボクサー・吉鷹弘氏が主宰する「チーム吉鷹」に定期的に練習へ通っている。その吉鷹氏からは、「長谷川はパンチが上手いから見えないよ」とアドバイスを受けていたという。
そこで荒東は、見えないパンチを無理に避けようとするのではなく、当たる部分を限定することで、ダメージを負わないようにしていたのだ。
さらに、この日の荒東は、いつもより少し半身に構えていた。
MMAにおいて半身に構えることは、前足を片足タックルなどで狙われやすくなるデメリットがある一方、相手の打撃が見えやすくなるというメリットもある。荒東は、長谷川があまりタックルに来ないと予想し、半身に構えることを選択した。

組み際の攻防でも、首相撲から崩しを入れて長谷川を転がす場面を見せたほか、あえて重心を低くしてミドルキックを放ち、長谷川に蹴り足をキャッチされても自分が転ばないようにするなど、細かな技術を随所で披露。そうした一つひとつの積み重ねが、荒東を勝利へと手繰り寄せた。
「勝敗は細部に宿る」とスポーツの世界ではよく言われるが、まさにこの試合は、それを体現するような一戦だった。
荒東が見せたのは、決して派手で目立つテクニックばかりではない。パンチを受ける位置、構え、重心、組み際の崩し――。そうした細かな部分を妥協なく遂行したことが、最終的な勝敗へと直結したのだ。
120キロのメガトン級による対戦ということもあり、終盤には両選手ともガス欠を起こし、会場から笑いが起きる場面もあった。

しかし、その中にも荒東が随所で見せた緻密な打撃テクニックがあり、そして完全にスタミナが切れながらも最後まで動き続けた長谷川の意地があった。
重量級ならではの迫力と人間味、そして一見しただけでは見落としてしまいそうな細かな技術が詰まった一戦。両者の戦いに、あらためて賞賛を送りたい。
Photo by RIZIN FF