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ベンジャミン・チェンが語るヒクソン柔術の核心「最も大切で、最も難しいのが“コネクション”」

ヒクソン・グレイシーから柔術を学び続けるベンジャミン・チェン。

昨年フロリダのベロビーチへ拠点を移したヒクソンのもとへ、チェンは3カ月に一度のペースで足を運び、数日間にわたって集中的にレッスンを受けているという。

そこで学んでいるのは、技の手順や理論だけではない。

言葉では説明しきれない「感覚」、そして相手との「コネクション」。

ベンジャミン自身が「まだ理解度は30%ほど」と語るヒクソンの柔術とは一体どのようなものなのか。その奥深さについて聞いた。

──ヒクソン・グレイシーから学ぶために、現在も定期的にベロビーチへ通っているそうですね。

ベンジャミン:ヒクソンは昨年、ベロビーチに引っ越しました。ですから、3カ月ごとに彼に会いに行っています。何日かまとめてレッスンを受けるのですが、終わった後は本当に疲れます。論理や理屈を教える先生もいると思いますが、私はどちらかというと理屈で考えるタイプです。でも、ヒクソンは「感覚」を教えてくれます。

──「感覚」とは、具体的にはどのようなものなのでしょうか?

ベンジャミン:彼にとって、その感覚の部分は目には見えないものなので、普通に見ているだけでは分かりません。でも、実際に彼からその感覚を感じさせてもらうと、とても理解しやすい。答えが自動的に出てくるような感覚になります。自分のスパーリングでも、頭では「自分の動きは有効ではない」と分かっていても、感覚としてそれを感じ取れるようになる。ヒクソンから、その答えを感じ取ることができるのです。

自分の身体の動きを意識できてさえいれば、とてもシンプルなことなのですが、人間の脳はどうしても力づくで問題を解決しようとしてしまいます。だから、実際に学ぶのはものすごく難しいのです。

──ヒクソンの動きは、技術を組み立てているようには見えないということですか?

ベンジャミン:そうです。彼の感覚は、まさにコンピューターのようです。「これはどのポジションなのか」と考えて動いているわけではなく、自動的に動いています。相手を制したい、自分にとって有利なポジションを取りたい、といった発想とは少し違う。もう次元が違うのです。

──具体的に、どのような違いを感じますか?

ベンジャミン:例えば、相手がしっかりガードを仕掛けてきたとします。普通なら「よし、ガードをパスしよう」と考えますよね。でも、ヒクソンの動きはまったく違う。ヒクソンとの間には、明らかな理解の差を感じます。彼はまったく違う次元で動いているのです。ヒクソンからこのコンセプトを学ぶことができれば、何か特別なものを学んでいるような感覚になります。決して派手な刺激があるわけではないかもしれません。

でも、ヒクソンはすでに無意識の中で非常に深い領域に達している。だからこそ、彼に師事している指導者たちも、その難解さを感じているのだと思います。

──指導を受けていて、ヒクソンは常に無意識で動いているように感じる、と。

ベンジャミン:そう感じます。ヒクソンは指導する際も、常に無意識で動いているように見えます。特に重視しているのが、動く際のタイミングです。相手がどう動くかによって、その都度、対応の仕方を変えていきます。

──言葉で説明するのが難しい領域なのですね。

ベンジャミン:そうですね。言葉には限界があります。ヒクソンの感覚のすべてを言葉で表現することはできません。だから、私も「違う感覚」としか言えない。人それぞれ感じ方は少しずつ違います。それでも、その中でコネクションを感じることはできます。だからこそ、ヒクソンの領域は特別なのです。そして、学ぶことも教えることも同じくらい難しい。それがまた、やりがいでもあります。

──ベンジャミンさん自身が目指している柔術も、まさにそこにあるのでしょうか?

ベンジャミン:まさに、それが自分の望んでいることです。ディフェンスにしても何にしても、本当に細かな要素がたくさんあります。相手の体型に応じて動き方を変えることもあります。でも、それこそが柔術なのだという現実を理解することが、とても重要だと思っています。

──ヒクソンは、決まった型を教えるような指導はしない?

ベンジャミン:はい。ヒクソンは決して型にはめるような指導はしません。大半の人は、技には手順があると考えます。でも、彼はそうではない。攻撃や相手の動きを常に感じ取っています。だから、今の自分の理解度は30%くらいでしょうか。

──まだ30%というのは、かなり奥深い世界ですね。

ベンジャミン:でも、重要なのはヒクソンからこの柔術を学ぶことです。例えば、自分の身体に抵抗が掛かっているときに、どう対応するべきなのか。その感覚は以前よりも良くなっています。もちろん、まだすべての方法について確信を持っているわけではありません。でも、少しずつそういう感覚が身についてきているという感じです。

──一般的な柔術では、技の完成やポジションの獲得に意識が向きがちです。

ベンジャミン:そうですね。多くの人は結果を出すことや、完璧なポジションを取ることばかりに集中します。でも、この柔術の概念を理解するのは難しい。その中で最も大切で、同時に最も難しいのが「コネクション」です。ヒクソンの身体的な動きが特別に複雑というわけではありません。実際にやっている動きは、とてもシンプルです。

──では、なぜそのシンプルな動きが難しいのでしょうか?

ベンジャミン:大半の場合、私たちは手順から技を作ります。でも、ヒクソンは攻撃が物理的な形になる前に、それを感じ取っているのです。だから「感覚」がとても大切になります。ヒクソンが相手と組み合うとき、彼は考えていません。普通なら、相手が動いたら、それに応じて自分の形を変えたり、ポジションを変えたりしますよね。でも、彼の場合はそういうものとは違う。手順を覚えることでもないし、「どうやってレバレッジ(てこの原理)を効かせるか」という話でもありません。誰もがレバレッジの効かせ方や、どうやって強力な力を生み出すかということに集中してしまいます。でも、それだけでは本質を理解するのは難しいのです。

──以前のインタビューでも、ヒクソンの哲学について「大きな氷河のようだ」と話していました。

ベンジャミン:はい。以前のインタビューでもお答えしましたが、ヒクソンから実際にレッスンを受けてみると、彼の哲学はまるで大きな氷河のようだと感じます。表面から見えるものよりも、はるかに深いところまで考えられている。実際に学べば学ぶほど、その深さを感じますね(苦笑)。ヒクソンの柔術を理解するには、まだまだ時間がかかると思います。

このインタビューは6月の来日時にラテンス柔術代表の石井拓氏によって行われたものだ。

「 ベンジャミン・チェン・スペシャルクラス」
日程:9/30(水) 20:00-22:00
参加費:
ミューズメンバー3000円 / 一般5000円
定員:20名
■参加予約はミューズ柔術アカデミーのInstagramのDMにて受付中