
幼少期から柔術に触れ、一度は競技から離れながらも再び畳へ戻った竹浦遥希。
高校時代には柔術に没頭し、現在は母親として子育てをしながら競技を続けている。
今回、産後復帰を経てムンジアル出場を決意した竹浦遥希に、柔術との出会い、競技への向き合い方、そして家族への想いを聞いた。
(聞き手・文 = 濱田しいな)
――柔術を始めたきっかけを教えてください。
遥希:小学4年生の頃に始めました。
でも当時は今みたいに楽しかったわけじゃなくて(笑)。
2年くらい続けていたんですけど、できる技はシザースイープと腕十字くらいでした。
正直、あまり面白さも分かっていなかったと思います。
その後は中学3年間、一度柔術を辞めました。
――そこから再開した理由は?
遥希:高校生になった時に、なぜか急にもう一度やりたいと思ったんです。
兄が石黒翔也なので、試合や練習会には昔からよく行っていて、柔術自体はずっと身近にありました。
それで改めて始めてみたら、そこからは完全にハマりました。
学校のチャイムが鳴ったらすぐ帰宅して練習の準備をして、毎日3時間くらい練習していました。
いわゆる青春らしい青春はなかったですね(笑)。
――柔術のどんなところに魅力を感じていますか?
遥希:自由なところです。
柔道も経験しましたが、自分にはあまり合いませんでした。
柔術は決まった型にはめるというより、自分に合ったスタイルを探しながら戦える競技です。
体格や性格によっても答えが変わる。その自由さが面白いと思います。
――試合中に意識していることはありますか?
遥希:ペース配分です。
疲れると判断力が落ちてしまうので、できるだけ冷静な状態を保つことを意識しています。
負ける試合を振り返ると、自分の一つの判断ミスから一気に流れを持っていかれることが多いんです。
だから時間の使い方はかなり大切にしています。
色帯時代は試合時間も短かったので、まずアドバンテージを先に取ることを意識していました。
ただ最後の1分は別です。そこはもう、がむしゃらですね(笑)。
――青帯時代は苦しい時期もあったそうですね。
遥希:本当に勝てませんでした。
周りには強い選手ばかりいて、試合に出ても結果が出ない。
そのうち試合に出ること自体が目的になってしまっていました。
負けてもしっかり反省せず、そのまま次の大会へ向かうような状態でした。
でもある時、「このままじゃダメだな」と思ったんです。
そこから試合動画を見返して、自分のミスを分析して、一つずつ修正していきました。
その積み重ねで少しずつ勝てるようになりました。
――出産後、競技に対する考え方は変わりましたか?
遥希:すごく変わりました。
以前は全部自分のためでした。
時間も練習も、自分の好きなように使うことができました。
でも今は違います。
子どもとの時間を削りながら練習することもありますし、家族の協力がなければ続けられません。
だからこそ、以前より勝ちたいと思うようになりました。
自分だけの挑戦ではないという感覚があります。
責任もありますし、背負うものもあります。
「やるしかない」
そんな気持ちで試合に向かっています。

――母親と競技者の両立はいかがですか?
遥希:正直、すごく難しいです(笑)。
時間のバランスを取ることも難しいですし、休む時間もほとんどありません。
もっと子どもと過ごしたいと思うこともあります。
でも子どもが生まれてから幸せは何倍にもなりました。
精神的にも以前より安定しています。
大変ですが、結局は両立していくしかないんですよね。
――柔術に挑戦したい女性へメッセージをお願いします。
遥希:完璧を目指さないことです。
柔術って課題だらけなんです。
考えすぎると嫌になってしまう。
だから一日一つできるようになれば十分。
柔術だけじゃなくて、仕事も育児も同じだと思います。
完璧じゃなくて大丈夫です。
少しずつ前に進めばいいと思います。
――ムンジアル出場を決めた理由を教えてください。
遥希:産後4か月くらいの時に決めました。
子育てで毎日精一杯だったんですが、挑戦していない自分にモヤモヤしていたんです。
柔術も最初はゆるく続けるつもりでした。
でも一年以上休んでみて、「このままじゃいけない」と思いました。
だから、とりあえずエントリーしました。
最初で最後かもしれないから、まず挑戦しようと思ったんです。
――今回のムンジアルに懸ける想いを聞かせてください。
遥希:今回のムンジアルは、私にとって最初で最後の挑戦になるかもしれません。
ポイントが取れたこと。
家族が1週間海外へ行ける環境を作ってくれたこと。
週4~5回の練習ができたこと。
全部が奇跡みたいに揃って実現しました。
本来なら母になった今、一番優先するべきなのは家族です。
それでも家族は「頑張れ」と応援してくれています。
スポンサーとして支援してくださった方々もいます。
だからこそ結果を残したい。
そして何より、やり切りたい。
ムンジアル出場を決めてからは、毎朝4時半に起きて家事や仕事を先に終わらせたり、減量したり、本当に必死でした。
もう一度同じことをやれと言われてもできないと思います(笑)。
だからこそ、この積み重ねをすべてぶつけたいです。
――最後に意気込みをお願いします。
遥希:優勝したい気持ちはもちろんあります。
でも一番は、後悔のない試合をすることです。
迷いなく、自分らしく戦う。
そのために準備してきました。
集大成として、すべてを出し切ります。